生きているのが幸い

さいわいです

2024年4月7日(日) サイゼミ『訂正可能性の哲学』

サイゼミへ参加してきました。

今回で第16回とのこと。LWさんが主宰する会という括りで言うと、ぼくが初めて参加したのは『すめうじ』の批評会で、それが2020年3月の開催だったので、もう丸4年は関わりをもたせてもらっていることになります。
当時なんの交流も面識もなかったLWさんに「『すめうじ』読んだのでぼくも参加させてください!」と唐突にDMを送ったのがきっかけで、それから年単位でコミュニティと関わりが続くとは想像もしていませんでした。人との縁は不思議なものですね。

【訂正可能性の哲学について】

今回の題材は東浩紀『訂正可能性の哲学』。

個人的に、東浩紀には思い入れがある。というのも、ぼくがいわゆる人文書と呼ばれる類の本を趣味として読み始めたのは23歳頃からなのだけれど、一番初めに手に取ったのが東浩紀の『存在論的、郵便的』だったからだ。

高校時代はラノベ三昧、就職してからも読むのはせいぜい書店の入口そばで平積みになっている話題の小説くらい、という読書経験Lv.1の身では、当然ながらガチガチの哲学書を読めるはずもなく、「文章としては読めているはずなのにまったく意味が掴めない!」という体験が衝撃的だったことをよく覚えている。

しかしその『わからなさ』は、決して本の中身が無内容だからなのではなく、自分の知識や読解力の不足から来ていることは明らかだった。 当時のぼくにとって本とは消費的に『読まれる』ものであって、まさか逆に本の方から「お前に俺が読み解けるのか?」と試されることがあろうとは!

それでも諦めずに繰り返し読み進めていく内に「あれ、もしかして、これってこういうことか?」と、自分なりの『わかる』に変わっていく体験は心地よかった。その『わかる』もすぐに『やっぱりわからん』になって、またちょっとずつ『わかる』になっていく。ぼくにとって『存在論的、郵便的』は重厚なミステリーに似ていて、謎が謎を呼ぶスペクタクルで、電車待ちのホーム、友達との待ち合わせのカフェ、職場の休憩室、就寝前の布団の上、どこでも読み耽っていた。

 

とまあそういう訳で、東浩紀には思い入れがある。『存在論的、郵便的』以外の著作もほぼ読んだし、著書のみならずご本人の語り口も好きなので、シラスやYoutubeの配信もときどき見ている。今回の『訂正可能性の哲学』も、もちろん発売日に買って読んだ(なんなら一部内容は雑誌掲載時から読んでいた)。 
 

で、『訂正可能性の哲学』。

東浩紀ファンとしては、今回の『訂正可能性の哲学』は著者の集大成というだけあって、これまでの本や配信での語りなどで出てきた概念や議論がアベンジャーズよろしく勢揃いしていて、「うおお、あれがここでつながるのか!」みたいな興奮があり、とても楽しく読めた。その運命的な連なりは、いわゆる『伏線回収』のような、関係ないと思っていた出来事と出来事どうしが星座のように結びついて1枚の画を描き出す、そんな爽快感がある。

とはいえ、まさか『存在論的、郵便的』を著した30年前からこんなシナリオを描いていたはずもない。まさにこの本(と、『訂正する力』)で述べられている通り、30年に渡る道のりを振り返った時に「じつは……だった」という様々な訂正のもとに、事後的に描かれたものなのだろう。

それでも、その鮮やかさは実に見事で、一見遠く離れた思想や哲学や概念を、アクロバティックに結び付けていく著者の手腕が遺憾無く発揮されているように思う。

最初に読んだ時はこんな感じで「おもしれー!」と楽しく(消費的に!)読んでしまい、まったく批判的な読解などはできていなかったため、今回のサイゼミで取り上げてもらったのはとてもありがたかった。

サイゼミでどのような議論が交わされたのかは、LWさんのブログを読んでいただくのが一番早いと思うのでそちらへどうぞ(丸投げ)。

saize-lw.hatenablog.com

ビッグデータの辺り記述は本の内容をそのまま「そうなんだ〜」とふんふん頷きながら読んでいたので、きちんと学んだ方からの批判を聞くことで相対化できたのは非常によかった。

また、ゲーマーの参加者からクワス算周りの議論をカードゲームのルールの変化と関連付ける話が上がったり、実際にお店を経営している立場から観光論について補足が入ったりと、様々な背景や出自をもつ参加者がいることで様々な論点が出てくるところがゼミらしくてとても良いなあと思った。

【FP試験について】

FP資格について、試験の雰囲気やFP資格を取る意義などの話を伺えた。

妻子がいて、10年近く勤め人をやってと、まるで一端の社会人のような面をしているけれど、ぼくも大概世間知らずなので、きちんと社会制度について勉強した方がいいな〜と感じた。けっこう真面目に取得を考えてます。

【会場について】

今回のサイゼミは埼玉県行田市のカフェで行われました。参加者のひとりでもあるブロッコリーマンさんがバリスタをされており、美味しいコーヒーをいただきながらのサイゼミは最高でした。写真を撮っていなかったのが本当に無念。一面がガラス張りになっていて、とても開放的で落ち着くお店でした。また個人的にも訪問したいです。

maps.app.goo.gl

行田市にも当日が初めての訪問でしたが、駅前の雰囲気や街並みが(言うて数十メートル歩いただけですが)地元の浪江町に似ていて、なんだか田舎に帰ってきたような懐かしい気持ちになりました。

帰りは隣駅の東行田駅に使いましたが、暗闇の中に駅の電灯だけが煌々と輝く雰囲気が、これまた地元を思い出して最高でした。

東行田駅」のフォントもいい。

とても楽しい一日でした。